石鎚山連峰に属する瓶ヶ森は、石鎚山から東に8kmほどの場所にあります。
石鎚山(1982m)、二ノ森(1929m)に続く県下第3位の標高を誇る名山です。
石鎚国定公園、日本三百名山、四国百山、四国百名山。
登山者の姿も石鎚に次いで多く、季節を問わず、数多くの登山者に愛されています。
瓶ヶ森林道を利用すれば、標高1680m付近にある登山口も楽にアクセスできます。
(但し、冬季は瓶ヶ森林道は閉鎖されます。)
高山でありながら、大人子供に関わらず、登山経験のない方でも楽しめる優しい山です。
林道が整備される以前は、東之川・西之川登山口などから3、4時間かけて登る必要がありました。
厳冬期でも、山スキーを背負ったスキーヤーが白銀のスロープを求めて入山していました。
大学や高校の山岳部が雪上訓練登山で雪原に野営する光景もよく見られました。
林道からがメインになった今でも、東之川や西之川、菖蒲峠からの登山道は整備され、利用されています。
長い登山道の上がり口にはそれぞれキャンプ場があります。
2軒の山小屋・瓶ヶ森ヒュッテと白石小屋が建っていましたが、いまはどちらも営業していません。
宿泊は、シラサ峠にある山荘シラサやしらさ峠避難小屋、土小屋にある白石ロッジが利用できます。
瓶ヶ森には男山と女山のふたつのピークがあり、1896.22mの最高地点は女山です。
鎖場もある男山は南面が切り立つ岩山で、女山はササに覆われたなだらかなドーム状です。
どちらのピークにも権現様の祠が祀られています。
瓶ヶ森も古くから山岳信仰の対象でした。
石鎚山に奉られている石鎚権現は、元々、この瓶ヶ森にあったものを移したとの言い伝えがあります。
石鎚山が女人禁制だった頃は、女性にとって石鎚山を真横から遥拝できる地でもありました。
また、男山と女山と、岩峰・子持権現山を合わせ、三位一体(男と女と子)となります。
権現様の祠が祀られたことから、古くは旧権現山と呼ばれていました。
明治期の地図には“布留権現山(ふるごんげんさん/やま)”と記されていました。
瓶ヶ森人気の最大の要因は、山頂部に拡がる「氷見二千石原」と呼ばれるスロープ状のササ原です。
ササ原に立つ白骨林、その奥に石鎚山、という構図は切手を始め、写真でもいろんな所で目にします。
氷見二千石原は、今治、周桑、西条市街からも緑色の高原のように見えるほどの規模です。
オモゴザサのササ原にシコクシラベやウラジロモミなどの自然林が次第に混在する亜高山帯の植生が特徴です。
麓に降りるにつれ、針葉樹の植林へ変わります。
一帯は石鎚山系鳥獣保護区石鎚山系特別保護地区に指定されています。
動植物の採集や土壌の汚染などは厳禁です。
(国定公園内なので、違反すると、自然公園法により、最大一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金)
運が良ければレッドリスト級の貴重な野生鳥獣にも出会えるでしょう。
鳥類は、絶滅のおそれのある大型猛禽類のクマタカが有名です。
そのほか、南限の個体群として重要なビンズイ、カヤクグリ、ルリビタキ、メボソムシクイ、ホシガラスなど。
哺乳類では、天然記念物に指定されているヤマネも生息しています。
瓶ヶ森林道の全面舗装化以来、入山者が増加しています。
一方で、林道沿いは土砂崩れが頻発し、森林が回復していない部分も多数見られます。
ササ原の登山道は雨に浸食されやすく、歩道が水道に代わり、岩や石が露出しているカ所もあります。
歩きにくいからと、ササの中を勝手に歩いてしまうと踏み跡ができてしまいます。
後続者にさらに踏み拡げられた踏み跡に、雨の浸食が加わり、ササ原の荒廃がどんどん進んでしまいます。
実際、直線にえぐれた、多数の踏み跡があり、立ち入り禁止の看板もたくさん立てられています。
亜高山帯の自然はとてももろくて壊れやすく、回復にはとても時間がかかります。
オーバーユースが問題視されないよう、山でのルールやマナーを守って楽しみましょう。
|