岩黒山、筒上山は、愛媛・高知県境にそびえる、緑あふれる山山です。
石鎚国定公園。
四国百山・四国百名山。
四国の脊梁山脈、石鎚山系に属します。
岩黒山は石鎚山から東南東4km、筒上山は東南5.5kmの場所に肩を並べています。
三波川変成岩の基盤岩の上を古第三紀久万層群の礫岩がおおう地質です。
“岩黒”の文字通り、黒い岩盤の断崖が多く見られます。
岩黒山の山頂付近は起伏が激しく、登山道は一時、迂回を強いられます。
筒上山の手箱越側は軍艦岩の如き岩壁がのぞき、鎖を伝い登る鎖場となっています。
岩黒山、筒上山は標高が高いものの、主登山口は土小屋(1492m)にあり、わりと気軽に登ることができます。
登山道は、山頂に向かって稜線をアップダウンする尾根道のほか、トラバース路もあるので、縦走も楽です。
さえぎるもののない山頂は視界良好です。
見えるのは、石鎚山を中心とした四国の背骨のごとき山並み。
県境の山稜らしく、数え切れないほどの頂が波のように連なる様。
北の山間からは瀬戸内の島々、南は土佐湾すら目にすることができます。
岩黒山、筒上山は花の山です。
一帯は、ウラジロモミやブナの純林、ダケカンバ、コメツツジやヤマシャクヤクの群生。
ヒノキの巨木などの樹林帯も見事です。
苔むした登山道は、冷温帯から亜高山帯の植生を学べる自然観察路にもなっています。
手箱越への横道沿いでは、キレンゲシヨウマが保護されています。
日本では、石鎚に次いで筒上山で2番目に発見されました珍しい花です。
そのほかにもとても貴重な植物が春から秋にかけて咲き誇ります。
ツツジだでも、シロヤシオ(ゴヨウツツジ)、ヒカゲツツジ、コヨウラクツツジ。
アケボノツツジ、コメツツジ、ツルギミツバツツジなど。
種類も豊富、花の色も様々です。
広葉樹林を主体とする原生林の根元、林床はササです。
針葉樹林帯を抜け出た山頂は、瓶ヶ森や伊吹山のようなササ原に覆われています。
石鎚山や瓶ヶ森が山岳信仰の対象であるように、筒上山一帯も山そのものが信仰・修験の場です。
お山の入口には、山名を神名として掲げた鳥居が立つ神域となっています。
大峰宗覚心寺の道場が、岩黒山と筒上山の間の丸滝尾根、筒上山と手箱山の間の手箱越に建っています。
手箱越は鞍部のほとんどが道場の敷地です。
まるで城のように高く積まれた石垣の上に小屋があります。
どちらも山小屋ではないので、施錠され、柵で塞がれ、信者以外、立ち入ることも利用することもできません。
登山道として利用している土小屋から丸滝小屋、手箱越を結ぶ横道は信者らによって守られてきたものです。
筒上山山頂には大山祇神社や蔵王権現、熊野信仰の祠などが祀ってあります。
手箱越には、信者らが利用していた高知県側の安居渓谷に下って池川に至る古道が通じています。
寺川地区の滝・大瀧(おおたび)から氷室番所跡、手箱山を経由する登山道もあります。
石鎚スカイライン開通以前は、「長尾線」と云う登山道も利用されていました。
面河渓から丸滝山の長尾根へ上がり、丸滝小屋に至るルートです。
昭和28年(1953)、四国4県で共催された四国国体では、登山競技のコースになり、国体コースとも呼ばれました。
石鎚スカイライン開通によって寸断され、クルマで土小屋まで行けるようになって、すっかり廃れてしまいました。
現在、長尾線の名残りは、関門から13.1km地点にある「長尾根展望所」からたどることができます。
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